敗戦後、子龍は、既成の秩序や価値が崩れた混沌のなかで、これからの書はどうあるべきかを問い続けました。
その鬱積を打ち破るように、子龍は特別な大筆を注文し、濃い墨をたっぷりと含ませ、全身を打ち込んで書くようになります。
1950年には『書の美』に「α部」を設け、文字に頼らず、点や線そのものによって自らを表す試みに踏み出しました。子龍は、その根底にあるものを「点や線、したがって筆への信頼」と記しています。
子龍にとって筆は、単なる道具ではありませんでした。
「作者にとって筆は、真に許しあった無二の相棒なのである。長いつきあいによって、いのちの底にまで招じ入れた人だけが、筆と共に躍動することができる。」
ここに展示されている筆と筆掛けは、子龍が実際に使用していたものです。
その一本一本には、生涯を通じて子龍の書を支えた「筆への信頼」が宿っています。 この言語の音声はまだありません
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筆 ― 無二の相棒 | 森田子龍