『墨美(ぼくび)』は、子龍が1951年6月に創刊し、1981年10月の通巻301号まで、30年にわたって編集・発行を続けた、書芸術の総合雑誌です。
子龍は創刊当初から、明確な目標を掲げていました。その一つが、書を近代的な美学のもとに究明し、芸術としての社会的地位を高めること。京都大学の美学者・井島勉や、京都学派の哲学者・久松真一らとの交流は、子龍が書を現代の芸術として理論づけていくうえで、大きな知的支柱となりました。
そして、もう一つの大きな目標が、書を世界へと開くことでした。
『書の美』の時代、イサム・ノグチがもたらした写真や、画家・長谷川三郎の紹介を通じて、子龍はアメリカの画家、フランツ・クラインの抽象絵画と出会います。その大胆な黒い線と空間に、子龍は書と通じる美を見いだし、『墨美』創刊号の表紙に、当時まだ日本ではほとんど知られていなかったクラインの作品を採用しました。
これをきっかけにクラインとの交流は深まり、クラインはニューヨークの最先端の画廊に『墨美』を紹介しました。クラインは子龍へ宛てた手紙の中で「ニューヨークのあちこちで墨美が話題になる日も近い」と絶賛しています。
その後も『墨美』は、ジャクソン・ポロック、ピエール・スーラージュ、ジョアン・ミロ、ハンス・アルトゥングなど、欧米の現代美術を積極的に取り上げていきます。
書と抽象絵画。東洋と西洋。
それまで別々の世界にあった東洋の書と西洋の現代美術を、同じ誌面の上で向き合わせ、互いに問い直す場をつくること。
それこそが、子龍が『墨美』を通して30年にわたり追求し続けた「東西の交流」でした。 この言語の音声はまだありません
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墨美 | 森田子龍