「龍は龍を知る」―同じ高い境地に達した者だけが、互いの真の価値を知ることができる。
子龍にとってこの言葉は、少年時代から生涯にわたって心の底にあり続けた、特別な言葉でした。
その原点は、小学生の頃にさかのぼります。
授業で、江戸時代の儒学者・新井白石の少年時代について学んだときのことです。
白石は、富豪の河村瑞賢から「養子になれば、思う存分勉強させてやる」と申し出を受けました。しかし白石は、それを断ったといいます。
まだ小さな蛇のうちは、身体に傷があっても誰も気に留めない。けれど、やがて大きな龍となって天に昇れば、その傷は誰の目にもつく。だから自分は、人の庇護を受けて傷のある龍にはなりたくない―。
この白石の生き方に、少年だった子龍は強く心を打たれました。
そしてその授業の後、子龍の才能を信じていた恩師が、期待を込めて贈った言葉が、「龍は龍を知る」でした。
子龍は後に、「この二つが深く肝に焼きついて、小学生の私は、小さくとも無傷の龍でありたいと思い定めた」と振り返っています。
そして子龍は、恩師から贈られた大切な言葉の「龍」を自らの雅号にいただきながらも、まだ自分は大龍ではないという思いから、「子どもの龍」―「子龍」と名乗るようになりました。
既成の権威に寄りかからず、自らの信じる道を歩むこと。
少年時代に恩師から授けられたこの言葉は、その後の子龍の生き方を支える原点となっていきます。
《龍知龍》は、子龍という名と、その生涯を貫いた信念の原点を映す作品なのです。 この言語の音声はまだありません
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作品《龍知龍》 | 森田子龍